「業務を自動化したいけれど、プログラミングはできない」「GASは試したが途中で挫折した」——そんな声を中小企業の現場でよく耳にします。2025年12月、Googleがその悩みに直接答えるツールを正式リリースしました。Google Workspace Studio(旧Google Workspace Flows)です。ノーコードでメール振り分け・承認フロー・日報収集などの自動化が、Google WorkspaceのUI上で完結します。本記事では概要の説明にとどまらず、実際に3つの自動化を構築した手順を画面の流れに沿って解説します。GASやZapierとの使い分け指針も整理しているので、「どのツールを使えばいいかわからない」という方もぜひ最後まで読んでみてください。
- Google Workspace Studio の概要と旧Flowsとの違い
- GAS・Zapier・Workspace Studio の3択比較と選び方の基準
- Workspace Studio への初回アクセスと初期設定の手順
- メール自動振り分け+Chat通知エージェントの作り方
- 承認フロー(申請→上長確認→結果通知)の設定手順
- 日報・週報の自動収集+Sheetsへの集計・要約の実装
- GASとWorkspace Studioの使い分け・組み合わせ方針
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Google Workspace Studio とは(2025年12月正式リリース・旧Flowsとの違い)
Google Workspace Studioは、Google Workspaceのアプリ間をノーコードで連携・自動化するプラットフォームです。2025年12月に正式リリースされましたが、その前身にあたる機能がいくつか存在していたため、まず歴史的経緯を整理しておきましょう。
旧Google Workspace Flows / Duet AI との違い
2023〜2024年にかけて、GoogleはWorkspaceの自動化機能を「Google Workspace Flows」という名称でベータ提供していました。当時はトリガーとアクションを組み合わせる基本的なワークフロー構築が中心でしたが、AIによる判断・要約機能が限定的で、一般ユーザーが使いこなすには敷居が高い状態でした。
並行して展開されていた「Duet AI for Google Workspace」は、GmailやDocsでの生成AI補助機能をまとめたブランドでした。2024年初頭にDuet AIはGemini for Google Workspaceへと統合・改称され、その過程でワークフロー自動化機能も大幅に刷新されました。
2025年12月の正式リリース時に「Google Workspace Studio」という統一ブランドのもと、以下の機能が一体化されました。
- ワークフロー自動化(旧Flows):トリガー+アクションの設定
- AIエージェント機能:GeminiモデルがAIエージェントとしてフロー内で動作し、メールの分類・要約・判断を自動実行
- チームテンプレート:よく使う自動化パターンをテンプレートとして共有・再利用
- 実行ログ・モニタリング:エージェントの動作結果を一元確認
Workspace Studio の核心:AIエージェントが「判断」する自動化
従来のワークフロー自動化ツールは「条件に合致したら〇〇する」というルールベースの動作でした。Workspace StudioはGeminiモデルをエージェントとして組み込むことで、「このメールはクレームか問い合わせかを判断して、それぞれ適切な担当者に振り分ける」といったAIによる意味的な判断が可能になっています。
具体的にできることを整理すると、以下のとおりです。
| 機能カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| メールトリガー | 特定のキーワード・送信者・ラベルを条件にフローを起動 |
| フォームトリガー | Google Formsへの回答をきっかけに処理を開始 |
| スケジュールトリガー | 毎日17:00、毎週月曜など時刻・曜日指定で実行 |
| AI処理(Gemini) | テキストの分類・要約・感情分析・返信文案生成 |
| Workspace連携 | Gmail・Chat・Sheets・Docs・Formsとネイティブ連携 |
| 承認アクション | メールやChatで承認/却下ボタンを送信し結果を記録 |
費用:Business/Enterprise プランに追加費用なし
Workspace Studioは、Google Workspace Business StarterからEnterprise Plusまで、既存プランの範囲内で利用できます。2026年4月時点では追加の課金は発生していません。ただし、AIエージェント機能(Gemini利用部分)については、利用量が極端に多い場合は将来的に上限が設けられる可能性がある点は念頭に置いておきましょう。
Google Workspace の管理者がアドオン機能として有効化する必要があるため、従業員側でいきなり使い始める前に、IT管理者またはGoogle Workspace管理コンソールの管理者権限を持つ担当者への確認が必要です。
GAS・Zapier・Workspace Studioの3択比較
「業務を自動化したい」と思ったとき、選択肢は一つではありません。Google Apps Script(GAS)、Zapier/Make、そしてWorkspace Studioの3つがよく比較されます。それぞれの特徴を把握したうえで、自社の状況に合ったツールを選びましょう。
| ツール | 技術要件 | 費用 | Workspace連携 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
| Google Apps Script(GAS) | JavaScript知識が必要 | 無料 | ネイティブ(最も深い連携) | 複雑なロジック・データ処理・外部API連携 |
| Zapier / Make | ノーコード | 月5,000〜30,000円程度 | API連携(やや遅延あり) | 外部サービスとの連携(Slack・Salesforceなど) |
| Workspace Studio | ノーコード | Workspaceプランに含む(追加費用なし) | ネイティブ(最も簡単) | Workspace内のトリガー型自動化・AI判断を含む処理 |
GASの強みと弱み
GASはJavaScriptベースのスクリプト環境で、Google Workspaceとの親和性が最も高く、無料で使えます。複雑な条件分岐、スプレッドシートの高度な集計、外部APIへのリクエスト送信など、「エンジニアが書けば何でもできる」という柔軟性が最大の強みです。
一方、JavaScriptの知識がないと作成・修正が難しく、コードをメンテナンスできる担当者がいなくなると「ブラックボックス化」するリスクがあります。非エンジニアが多い中小企業では、この属人化問題が大きな課題になりがちです。
Zapier / Make の強みと弱み
Zapier(米国)やMake(旧Integromat、チェコ)は、数百〜数千のSaaSサービスをノーコードで連携できる強力なiPaaS(Integration Platform as a Service)です。SlackやSalesforce、kintone、HubSpotなど、Workspace以外のツールとの連携が必要なケースでは依然として最有力の選択肢です。
デメリットは費用です。無料プランは実行回数・機能が非常に限定されており、実務で使おうとすると月額5,000円〜30,000円程度のコストが発生します。また、APIを介した連携のため、GASやWorkspace Studioに比べてデータアクセスの遅延や権限設定の複雑さが生じることがあります。
Workspace Studio の位置づけ
Workspace Studioは「Workspaceの中で完結する自動化をノーコードで作る」という用途に特化しています。追加費用なし・ノーコード・AIエージェント機能付きというトリプルメリットがあります。ただし、SlackやkintoneなどWorkspace外のサービスとの連携は現時点では限定的です。「Googleのサービスだけで業務が回っている」中小企業にとっては、最初の自動化ツールとして最も推奨しやすい選択肢といえます。
使い始め方:アクセスと初期設定
Workspace Studioへのアクセスと初期設定は非常にシンプルです。ここでは管理者側の有効化手順と、一般ユーザーとしての初回アクセス方法を順に説明します。
Step 1:管理者がWorkspace Studioを有効化する
Workspace Studioはデフォルトで無効になっているケースがあります。まず管理者が以下の手順で有効化します。
- Google管理コンソール(admin.google.com)にスーパー管理者でログイン
- 「アプリ」→「Google Workspace」→「Workspace Studio」を選択
- 対象の組織部門に対して「オン」に設定して保存
- 必要に応じて、エージェント作成を許可するユーザーグループを限定する(最初は管理者・情報システム担当のみ推奨)
設定が反映されるまで最大24時間かかる場合があります。翌営業日に再確認するのが確実です。
Step 2:workspace.google.com/studio にアクセスする
管理者による有効化が完了したら、ユーザーは直接URLでアクセスできます。ブラウザのアドレスバーに workspace.google.com/studio と入力してください。Google Workspaceアカウントでログイン済みの状態であれば、そのままStudioのダッシュボードが表示されます。
ダッシュボードには以下のセクションが並んでいます。
- マイエージェント:自分が作成・管理するエージェントの一覧
- チームエージェント:組織内の他メンバーが共有しているエージェント
- テンプレート:よくある自動化パターンの雛形(メール振り分け、承認フローなど)
- 実行ログ:過去の自動化実行結果とエラー確認
Step 3:テンプレートから始めるか、ゼロから作るかを選ぶ
初めて使う場合はテンプレートから始めることを強く推奨します。「メール自動振り分け」「承認フロー」「定期レポート収集」などの代表的なユースケースがテンプレートとして用意されており、項目を埋めるだけで動く状態に近いエージェントが作れます。ゼロから作る「新しいエージェントを作成」ボタンは、テンプレートを一通り触ってUIの感覚を掴んだあとに使うのがスムーズです。
次のセクションから、実際に3つの自動化を構築する手順を解説します。
自動化①:メール自動振り分け+Chat通知エージェント
最初に作るべきエージェントとして最も反響が大きいのが、メール自動振り分け+Google Chat通知の組み合わせです。「営業問い合わせは営業チャンネルへ」「クレームはカスタマーサポートへ」「採用応募はHRへ」といった振り分けを、Geminiが内容を読んで自動で行います。
構築手順(7ステップ)
Step 1:Studioダッシュボードで「新しいエージェントを作成」をクリック
ダッシュボード右上の「+新しいエージェント」ボタンをクリックします。エージェントの名称入力画面が表示されるので、「メール振り分け&Chat通知」など管理しやすい名前を入力してください。
Step 2:トリガーを設定する
トリガーは「特定キーワードを含むメールを受信したとき」を選択します。設定パラメータとして以下を入力します。
- 対象メールアドレス:info@(自社の問い合わせ窓口アドレス)
- キーワード条件:「すべての受信メール(キーワード指定なし)」または特定のキーワードを設定
- 除外条件:迷惑メールフォルダ・既読メールを除外するチェックをオン
Step 3:アクション1—GeminiでメールをAI分類・要約する
「+アクションを追加」から「Geminiでテキストを処理する」を選択します。プロンプト欄に以下のような指示を入力します。
「以下のメールを読み、内容を『営業問い合わせ』『クレーム・苦情』『採用応募』『その他』の4つに分類してください。また、メールの要点を3行以内で要約してください。出力形式:分類:〇〇 / 要約:〇〇」
プロンプト中の「メール本文」はWorkspace Studioの変数機能を使って {{trigger.email.body}} のように動的に差し込みます。
Step 4:アクション2—分類結果に応じてGoogle ChatのSpaceに通知を送信
「+アクションを追加」から「Google Chatにメッセージを送信する」を選択します。送信先SpaceはWorkspaceの組織内Spaceから選択できます。メッセージ本文には変数を組み合わせて以下のような内容を設定します。
「📩 新着メール通知
差出人:{{trigger.email.from}}
件名:{{trigger.email.subject}}
分類:{{action1.output.category}}
要約:{{action1.output.summary}}
→ メールを開く」
分類別に送信先Spaceを変えたい場合は、「条件分岐」ステップを追加します。Geminiの分類出力が「営業問い合わせ」のときはSpaceAへ、「クレーム」のときはSpaceBへ、という形で分岐させることができます。
Step 5:(オプション)GmailにラベルとアーカイブアクションをAdd
Gmailアクションから「ラベルを付与する」を追加し、分類結果に応じたラベルを自動付与します。受信トレイが自動整理されるため、担当者が手動で仕分ける手間がなくなります。
Step 6:テスト実行
「テスト実行」ボタンをクリックすると、最近受信したメール(最大5通)を使って動作確認ができます。各アクションの入出力データがログで確認できるため、Geminiの分類精度やChat通知の文面を調整するのに役立ちます。
Step 7:エージェントを有効化
テスト結果に問題がなければ「有効化」ボタンをクリックします。以降は条件に合うメールを受信するたびに自動的に実行されます。実行ログはダッシュボードの「実行ログ」タブでリアルタイムに確認できます。
このエージェントで削減できる工数の目安
問い合わせメールが1日20〜30件ある企業の場合、手動仕分けに費やしていた時間(1件あたり30秒〜1分)が週単位で3〜5時間削減できるケースが多いです。kaire.jpの支援先企業でも、このエージェント導入後に「担当者が本来の業務に集中できるようになった」という声が複数寄せられています。
自動化②:承認フロー(申請→上長確認→結果通知)
稟議書や経費申請、休暇申請など、「申請→上長確認→承認or却下→申請者へ通知」というフローは多くの企業で毎日発生しています。Workspace Studioはこの承認フローをノーコードで構築する機能を正式に備えています。
承認フローの全体像
構築する承認フローの流れは以下のとおりです。
- 申請者がGoogle Formsで申請内容を送信
- 上長のGmailに承認依頼メールが自動送信(承認/却下のボタン付き)
- 上長がメール内のボタンをクリックして承認または却下
- 申請者のGmailに結果が自動通知される
- 申請内容・承認結果・日時がGoogle Sheetsに自動記録される
Google Formsの準備
まず申請用のGoogle Formsを作成します。最低限必要な項目は以下です。
- 申請者名(テキスト)
- 申請者のメールアドレス(メール入力欄、またはGoogleアカウント情報を自動取得)
- 申請種別(選択肢:経費申請 / 休暇申請 / その他)
- 申請内容・理由(段落テキスト)
- 上長のメールアドレス(テキスト、または部署ごとに固定できるなら省略可)
フォームの回答をスプレッドシートにリンクしておくことで、最終的な記録をSheetsに蓄積しやすくなります。
Workspace Studioでの設定手順
トリガー設定:「Google Formsに回答が送信されたとき」を選択
トリガーとして「Google Formsの新しい回答」を選び、作成した申請フォームを指定します。フォームの各質問が変数として自動的に取得できるようになります({{form.applicant_name}}、{{form.reason}} など)。
アクション1:上長への承認依頼メールを送信
「Gmailでメールを送信する」アクションを追加します。送信先は {{form.manager_email}} で動的に設定し、件名・本文を以下のように構成します。
件名:「【承認依頼】{{form.request_type}}|{{form.applicant_name}}」
本文:申請者、申請種別、申請内容を変数で挿入したうえで、承認ボタン/却下ボタンを追加します。Workspace Studioの「承認アクション」機能を使うと、このボタンがメールに埋め込まれ、上長がクリックするだけで結果が記録される仕組みになります。
アクション2:承認結果に基づいて条件分岐
「上長が承認をクリックした場合」と「上長が却下をクリックした場合」で分岐します。承認側では申請者への承認通知メール送信とSheetsへの「承認」記録、却下側では申請者への却下通知メール送信とSheetsへの「却下」記録、それぞれのアクションを設定します。
アクション3:Google Sheetsに申請記録を書き込む
「Google Sheetsに行を追加する」アクションを追加し、記録先のスプレッドシートとシートを指定します。各列に以下の変数を対応付けます。
| 列名 | 変数 |
|---|---|
| 申請日時 | {{trigger.timestamp}} |
| 申請者名 | {{form.applicant_name}} |
| 申請種別 | {{form.request_type}} |
| 申請内容 | {{form.reason}} |
| 上長 | {{form.manager_email}} |
| 承認結果 | {{approval.result}} |
| 結果確定日時 | {{approval.timestamp}} |
タイムアウト設定:上長が返答しない場合のエスカレーション
Workspace Studioには「承認待ちが〇時間を超えたらリマインドを送る」タイムアウト機能があります。実際の運用では「24時間以内に返答がない場合、再度リマインドメールを上長に送信する」設定を追加すると、申請が宙に浮いたまま放置されるリスクを防げます。さらに72時間返答がない場合には上位の管理者にエスカレーションする分岐を設けることも可能です。
自動化③:日報・週報の自動収集+Sheetsへの集計
「日報の収集と集計」は多くのチームで手間のかかる業務です。メンバーへのリマインド、回答の取りまとめ、要約の作成——これらをWorkspace Studioで完全自動化できます。構築後はマネージャーが毎朝メールを開くと前日分の日報要約が届いている状態になります。
自動化の全体フロー
- 毎日17:00:チームのGoogle Chat SpaceにFormリンク付きリマインドメッセージを自動送信
- メンバーが各自フォームに入力(今日の業務内容・翌日の予定・課題)
- 回答がリアルタイムでGoogle Sheetsに自動記録
- 翌朝9:00:Geminiが全員の日報を読んで要約を生成
- マネージャーのGmailに要約サマリーが自動送信される
エージェント1:17:00のリマインド送信(スケジュールトリガー)
「新しいエージェントを作成」でスケジュールトリガーを選びます。実行スケジュールは「毎日、平日のみ、17:00に実行」と設定します。
アクションとして「Google Chatにメッセージを送信する」を追加し、チーム全員が参加しているSpaceを送信先に指定します。メッセージ本文には日報フォームのURLをリンクとして含め、「本日の日報入力をお願いします(締切:18:00)」のような案内文を設定してください。
平日のみ実行する設定は、スケジュール設定の「曜日」欄で月曜〜金曜にチェックを入れることで対応できます。
エージェント2:翌朝9:00のサマリーメール送信
2つ目のエージェントを「新しいエージェントを作成」で作ります。こちらもスケジュールトリガーで、「毎日、平日のみ、9:00に実行」と設定します。
アクション1:前日分のSheetsデータを読み込む
「Google Sheetsからデータを取得する」アクションを追加し、日報集計シートを指定します。取得範囲の条件として「回答日時が昨日の日付に一致する行のみ」を設定します(日付フィルタ機能を使用)。
アクション2:GeminiでSheetsデータを要約する
「Geminiでテキストを処理する」アクションを追加し、プロンプトを設定します。
「以下はチームメンバー全員の昨日の日報データです。マネージャー向けに以下の形式で要約してください:①チーム全体の進捗サマリー(3行以内)②注意が必要な課題・リスク(あれば箇条書き)③翌日の主な予定(メンバー別に1行ずつ)。データ:{{action1.output.rows}}」
アクション3:マネージャーにサマリーメールを送信
「Gmailでメールを送信する」アクションを追加し、送信先をマネージャーのメールアドレス(固定または変数)に設定します。件名は「【日報サマリー】{{date.yesterday}} チームレポート」、本文にはGeminiの要約出力とSheetsへのリンクを含めます。
週報への応用
同じ構成で週報を自動化するには、スケジュールトリガーを「毎週金曜 17:00」(リマインド)と「毎週月曜 9:00」(サマリー送信)に変更し、Sheetsデータの取得範囲を「直近5営業日分」に変えるだけです。月次レポートへの応用も「毎月最終営業日」のスケジュールトリガーで同様に実現できます。
GASとWorkspace Studioの使い分け指針
「Workspace Studioで何でもできるなら、GASはもう要らないの?」という質問をよく受けます。答えは「いいえ、両者は補完関係にある」です。それぞれが得意とする領域が明確に異なるため、使い分けと組み合わせを理解しておくことが重要です。
Workspace Studioが向いているケース
- 「メールが来たら〇〇する」「フォームが送信されたら〇〇する」というシンプルなトリガー型自動化
- 「毎週月曜の朝に〇〇する」などのスケジュール型自動化
- テキストの分類・要約・感情分析など、AIによる意味的な判断が必要な処理
- 非エンジニアのメンバーが自分で作成・修正・管理できる自動化
- チームで共有・再利用したい自動化テンプレート
GASが向いているケース
- 複雑な条件分岐やネストしたループ処理(例:1,000行のSheets処理、集計ロジック)
- 外部API(Slack API、独自システムのREST API)への直接リクエスト
- Googleドキュメントの高度な自動整形(テンプレートから契約書を生成するなど)
- エラー時の細かいリトライ・ロールバック処理
- 処理速度や実行タイミングを精密にコントロールする必要がある場合
最も実用的な使い方:Studio+GASの組み合わせ
実務で最も効果を発揮するのは、Workspace StudioとGASを連携させたハイブリッド構成です。具体的には以下のような分担が考えられます。
| 役割 | 担当ツール | 例 |
|---|---|---|
| トリガー検知 | Workspace Studio | 特定メールの受信を検知 |
| AIによる前処理 | Workspace Studio(Gemini) | メールを要約・分類してデータ抽出 |
| 複雑なデータ処理 | GAS | 抽出データを元に複数Sheetsを更新 |
| 結果の通知 | Workspace Studio | 処理完了をGmail・Chatで通知 |
StudioからGASを呼び出す方法は、Workspace StudioのアクションとしてApps Script WebAppsのURLを叩く形で実現できます。GAS側でdoPost()関数を実装してWebアプリとして公開し、Studio側から「HTTPリクエストを送信する」アクションで呼び出す構成です。
逆にGAS側からWorkspace Studioのエージェントをトリガーする方法は2026年4月時点ではAPIの公開範囲が限定的ですが、Google Workspace EventsのAPIを介した連携が段階的に整備されています。
段階的な移行戦略
現在GASで運用している自動化がある場合、すぐにWorkspace Studioへ移行する必要はありません。推奨するアプローチは以下です。
- 既存のGASスクリプトはそのまま維持し、新規の自動化はWorkspace Studioで構築する
- GASで属人化・ブラックボックス化しているスクリプトから順番にStudioへ移行を検討する
- AIによる判断が必要な処理はStudio(Gemini)に任せ、GASの複雑な処理は引き続きGASで運用する
まとめ:Workspace Studioは「第二の業務インフラ」になる
Google Workspace Studioは2025年12月の正式リリースから半年足らずで、業務自動化の選択肢として確固たる地位を確立しています。本記事で解説した3つの自動化——メール自動振り分け+Chat通知、承認フロー、日報収集+Gemini要約——はいずれもノーコードで1〜2時間あれば構築できます。
Workspace Studioが特に優れているのは、非エンジニアが自分で作れて、チームで共有できる点です。「エンジニアが居ないと自動化できない」という状態から脱却し、業務担当者自身が自動化オーナーになれる仕組みが整いつつあります。GASやZapierが必要なケースはまだ残りますが、Workspaceユーザーの日常業務の多くはStudioで賄えるようになってきました。
「第二の業務インフラ」と表現したのは、Workspace Studioが単なる自動化ツールにとどまらず、組織の業務フロー全体を可視化・標準化・AI化する基盤として機能し始めているからです。自動化エージェントのテンプレートが社内に蓄積されるほど、組織の業務ノウハウがデジタル資産として残ります。この観点でいえば、早期に導入・活用を進めた企業ほど、中長期的な競争優位を築きやすくなるでしょう。
まずは本記事の自動化①から始めてみることをお勧めします。「メールが来たらChatに通知が届く」という小さな成功体験が、社内の自動化文化を育てる最初の一歩になります。
Google Workspace×Geminiの社内研修に興味がある方は、GWS×Gemini研修のページをご覧ください。70名規模の導入実績をもとにカスタムプログラムを提供しています。
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